2011.02.28     

第9話「ダンス指導を生かす」〜石関みどりさん〜

「専門性」という言葉をつい思い浮かべてしまう、フィットネス業界の先輩にインタビューしてきました。女性が子育てをしながら仕事をしてゆくには、いくつかのコツが必要だと思うのですが、今回は、ダンスのインストラクターという仕事を通して輝く、石関みどりさんにお話を伺いました。

石関さんは、ラテンダンスのレッスンを持つインストラクターであり、二児の母でもあります。また、BailaBailaシルバートレーナー、メガロステクニカルサポートスタッフ、チームダンスキンなどの役を務める実力派インストラクターです。私の昔からの先輩で、仕事もプライベートも先に進んで経験されている、尊敬するお姉さんのような人です。インタビューで久しぶりにお会いし、下の子(美月紀ちゃん)と、我が子(凛)との四人で和やかムードですすみました。

荒川「まず、復帰の時期ですが、上の子(衣舞紀ちゃん)を出産してどれくらいで復帰されたんですか?」

石関「3ヶ月くらい。子供のダンスのクラスに復帰したのがはじめかな」

荒川「そのときは、保育園に預けて、ですか?」

石関「生徒さんのお母さんが『乳母になるから戻ってきて』と言ってくれて。その言葉に復帰を決意して。実際レッスン中はだっこしてもらったり、あやしてもらったりしてとってもお世話になりました。」

荒川「周りの方に助けられながらだったのですね。でも、そんなことを言ってくださるなんて、先生のレッスン&人間性両方にとびきりの魅力があったからでしょうね!レッスンは他にやられていたのですか。」

石関「子供のダンスクラス以外に家から近くのスポーツクラブでのレッスンをやったよ。母乳で育てていたので、4時間以上あけてしまうわけにはいかなかったから。」

荒川「胸がはってきてしまいますよね、わかります。仕事のペースはどうですか。」

石関「今は、子供のための時間と、仕事する時間とでバランスが取れているから、今のペースで丁度いい。人と比べると、もっとやらなくちゃと思うけど・・・・」

荒川「みどり先生でも、そう思うんですか?」

石関「思うよー!次々いろんなものが出てくるし(新しいスタジオの商品が出てくる、という意味)研修を受けたりや勉強をする時間も欲しい。」

荒川「今、仕事は週に何本くらいやってらっしゃるのですか?」

石関「レギュラーで5本。その他、(スタジオ商品である)振り付けがかわるときのインスタラクターへの研修と、ダンス総合雑誌DDDプロデュースの代官山Dスタジオのレッスンが月に一回」

荒川「以前はお子さんはどのようにしていたのですか」

石関「市がやっている子育て支援のファミリーサポートという出張ベビーシッターのようなサービスを利用していたよ。公民館などでのレッスンのときは、現場に来てもらって上の子と二人、預けて見てもらっていた。二人一緒だと下の子も安心するし。今は母と同居しているのでいろいろ助けてもらってる。」

荒川「そうですか、(美月紀ちゃんに向かって)、いい子にお留守番していたんだねー」

美月紀ちゃん、ニコニコ笑いながら絵を描いて遊んでいる。

石関「学校や幼稚園の色んな行事で代行をださないといけないし、子供が学校から帰る時間には家にいておかえりと言ってあげたい。なのでこれ以上定番のレッスンは担当できないけどね。」

荒川「その時その時、色んなところに預けてお仕事されてきたんですね。」

石関「下の子は、保育園に少し預けていたけど、よく泣いたので、見かねて主人が平日に休みをとってくれて、ベビースイミングに連れて行ったり、公園で遊ばせたりしてくれた。理解のある人で感謝しています。」

荒川「旦那さんもお仕事お忙しいでしょうしね」

石関「忙しいのが大好きな人なので大丈夫。以前より土日も休めるようになってきているし。あとは仕事で私がイベントの仕事や研修はのときは一日がかりで遊びに連れだしてくれたり寝かしつけてくれたり。」

荒川「すごく子育てに参加してくれていますね」

石関「子供とパパだけの時間っていうのはなかなか確保できないから、逆にいいかもしれない。子供もパパと出かけるのが嬉しくて『ママお仕事がんばってね』なんて言って送り出してくれる。」

荒川「では、子育てと仕事の両立でタイヘンだと思うことは」

石関「行事などで仕事を休まなきゃいけないこと。私にとっては子供の成長もしっかり見ていたいし、かと言ってしょっちゅう代行を出すのも私のレッスンを楽しみにしてくれる方々に申し訳ないし。今はとってもママを必要としている時期なので、できるだけ答えてあげたいと思う。

あとは時間のやりくりかな。大変だなぁと思う反面、趣味の英会話のプライベートレッスンを続けて、自分の時間も確保するようにしてる。後は可能な限り子供を連れ出してママはこういう業界でお仕事をしているんだよって見せるようにして。

ついこの間もエアロビクス世界チャンピオンのロバソンのレッスンを受けに行ったとき連れて行ったの。あと私の大先輩のパーソナルトレーナー、谷香織さんが立ち上げた白金のジム http://synergycenter.jp/contact に連れて行ったときには元ロイヤルバレエ団の吉田都さんに会えた。上の子がバレエをやっているのでとてもいい刺激になったみたい。

荒川「ところで、バイラバイラという商品をレッスンで担当されていますが、どんなものでしょう。バイラはバイラでレッスンを持ち、ラテンはまた別に持っておられるわけですが、違いは何ですか」

石関「バイラはプレコリオ(※)、ラテンはオリジナルで、NYにダンス留学していたとき受けていたラテンがベースになってる。」

※プレコリオとは、あらかじめ他者が作った振り付けを他の指導者が提供してもらい、お客様に振り写しするという意味。店舗が多いフィットネスクラブにあるスタジオプログラムの一種。

石関「バイラはバイラのために音楽が制作され、振付は世界中でトッププレゼンテーターとして活躍しているスペイン人のジョアンアルティセンが担当している。バイラは音楽と振付の一体感にこだわって作られていながらも、しっかり汗がかけて運動効果もちゃんとある。

彼のプログラム構成や振付のセンスなどとても素晴らしいので新しい作品が出るたびに毎回勉強させてもらっています。私のオリジナルのクラスは音楽は私の感性にひっかかったものを選んで自由に振付をしてます。運動というより参加者の表現の場を作りたいと思っています。もちろんフィットネスクラブでやるプログラムなので楽しく!が第一です。」

荒川「同じ、ラテンのレッスンでオリジナルのものを担当できるのに、敢えてプレコリオの、人が作った商品を提供するのに抵抗はありませんでしたか」

石関「勉強させてもらっているという感じ。バイラに関わったことによってパフォーマンスの仕事から地方の指導者の研修など活動に幅が持てたし。後は一緒に仕事をしている仲間達が魅力的なので毎回いいエネルギーをもらってます。」

荒川「うーん、逆に、自信がないと、できないですよね。こだわりが強すぎて固執してしまうとプライドが高くなってしまって、プレコリオ商品を提供できなくなってしまう、というか」

石関「最近感じるのはオリジナルのクラスができないインストラクターが増えつつあることかな。」

荒川「インストラクターの個性がでにくくなってきていますね、商品としての感覚が強い、というか。プレコリオを担当するためにはインストラクター側にお金もかかるわけですし。」

石関「フィットネスクラブ自体に、インストラクターにプレコリオを提供する、というビジネスが定着してきている。

一方で、フィットネスクラブに足を運ばない人はたくさんいて、そういう人こそ、本当は運動が必要なのに」

荒川「マーケットが、運動しない人ではなく、インストラクターやフィットネスフリークに偏ってしまっているのですね」

石関「そういう中で、どう自分をだしていったらいいのか、この人の、このレッスンでなきゃダメっていうものを提供できるかどうか、だね。あるジムは、祝日はレッスンがなくて、スタジオでDVDだけ流しているところも出てきているからね。レッスンなくなっちゃうかもね」

荒川「えーー!お、おそろしい」

石関「でも人がライブで与えるエネルギーは絶大だと思う。」

と、話は業界の動向についてになっていったのですが、専門分野で生きていく場合、実力だけでなく、自分をよく知り、自分の特長をどう生かし、アピールしていくかというプロデュース力も必要で、さらに育児をしながらになると、まわりの人の理解やサポートなしでは出来ないので、コミュニケーション能力も必要でしょう。

 さらに、業界の動向を把握して、客観的に動く冷静さも大切です。石関さんは、第1児を出産したあと、仕事に復帰し第2児を出産してまた復帰、というように長く現場を離れていないのも、専門分野で生きる人には有利かもしれません。

「生徒さんのお母さんに『乳母になるから戻ってきて』と言われてその言葉に甘えさせてもらったの」

 仕事がしやすい環境にできたのも、人とのコミュニケーションからだし、それまでの実力を買われたからです。何より、生活の基盤である家族の理解が一番だと思いますが、それを作るのもまた、女の仕事なのでしょう。女性には、色んな要素を少しずつ持って頭を使い、心を配りながら、笑って輝くような力が潜んでいるような気がしました。

 仕事のボリュームや子育てのバランスを決めるのも自分ですよね。価値観によって毎日のバランスが作られるとすれば、どう割り振ってゆくかということは、どう生きるか、という風に言えるのかもしれません。

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