2007/02/05   

第9話 : ヒューマン・ドリーム・サポート・セミナ―開始

セミナーの位置づけ

 

2006年11月30日、ひとつのセミナーが,京都商工会議所の大講堂にて行なわれた。

このセミナーは「私たちの大いなるミッション(使命)は、地球・国家・地域レベルの様々な課題に対して『人づくり』を通して問題解決を図ることである。そして、自立した人間として、仕事を通して人に喜びや感動を与えられる能力を高め、感性豊かな本物の人間になるため、自ら鍛え上げることである」と謳う成基コミュニティグループのグランドミッションを背景に、社員の「夢」を明確にさせる全社員対象のセミナーである。

 名づけてヒューマン・ドリーム・サポート・セミナ−(以下HDSセミナーと略す)。

社員たちが夢を明確化し、自分の天命を知ることによって、会社の中での己の役割を確信する人財育成を主な目的としている。

私が理想とする成基コミュニティグループは、こうした「人財」によって創造されるヒューマン・ドリーム・サポート・カンパニーだ。

「人材」と詠わず、あえて「人財」と記しているのは「人こそ会社の財産」と願って止まない会社の理念なのである。

しかし、私が知る限り、HDSセミナーの開始を宣言された社員たちは一様にセミナーの本質と自分たちとの関わりをあまり理解できていないように見えた。

思い起こせば、教育コーチングを成基コミュニティグループが取り入れたのは今から6年前。当時も今回と似たような雰囲気に周りが包まれた。

ところが教育コーチング開始から6年が過ぎた今、教育コーチング受講者は約14,000人に達し、教育コーチング認定コーチは5000人にまで上った。今もって素晴らしい効果を挙げて前進中だ。しかし、6年前、誰がここまでの飛躍を予想できただろう。

今回のHDSセミナーも同様、5年後には社員と会社に大きな効果をもたらす基盤となってくれることを信じて疑わない。

このセミナーの最も大きな重点課題は、いうまでもなく「人の育成」だった。

 

さて、HDSセミナー開始にあたり、まず成基コミュニティ−グループのグランドミッション体現化のためには何が必要かを明確にしておく必要がある。

あえて言うならば、マンネリ化を防ぎ個の体制を守りながら、集合体としての纏まりを見い出せるディビジョン経営、そして、現在のブランドを守り、ヒューマン・ドリーム・サポート・カンパニーの波及と浸透を目的とした人づくりプログラムとエリア戦略だ。

その基本戦略をふまえた上で重要な課題となるのが、経営品質向上のプログラムであり、顧客本位でありながら社会との調和に基づく卓越した経営と言えるだろう。

ここで忘れてはならないのがコンプアライアンス(顧客本位)経営である。

顧客のニーズに応え、応諾することは、最も重要であるが、我々の仕事はマニュアルどおりにできるものではない。子どもたち、その保護者に至るまでのすべてが顧客であり、多くの要望に応えながら、目に見える成果をも上げなくてはならない。しかも、その成果とは顧客である子ども自身や親が出す成果だ。ここが他の事業と大きく異なるところであり、「人の育成」に最も力を入れている大きな理由である。

更に、コンプアライアンス経営を安心して行なっていくためにはリスクマネジメントとセーフティネットは決して欠かすことができない重要課題だ。

リスクマネジメントをどう考え、セーフティネットの体制を万全に整えることは、会社経営上の基本中の基本といえるだろう。

それらを社員ひとりひとりが、それぞれの頭、そして心の中で、どう捉え、個々の職場でどう行かしていくのか―。

「その方法を教える」ではなく、「その方法を“個々で考える力”を指導する」というのがこのセミナーなのだ。

つまり、研修では「やり方」を指導するのではなく「あり方」を見つめるということが徹底的に重視される。

 

AWAYの不文律を破る

 

ヒューマン・ドリーム・サポート・カンパニーを目指す、成基コミュニティグループは、市場規模が縮小傾向の今であっても、さらなる拡大を狙っている。

来年45周年を迎える当グループは、2010年の半世紀ビジョンを2012年に掲げ「ブランドの定着」「体質の安定」「更なる人の育成」を徹底的に強化したいと考えている。

これらをベースに次世代・個別教育ディビジョンの東海地区、関東地区への進出、幼児教育ディビジョンの関西高所得者層住居地区へのエリア展開、そして、新規事業(コーチング事業、ゴールフリーFC展開、衛星予備校事業)の地域拡大を狙っている。

地元(HOME)から進出した新たな地域(AWAY)での成功は一般的に難しいと言われている。

プロ野球の試合がそうであるように、HOMEでは勝てるのに、遠征先(AWAY)ではめっぽう弱いというのが一般論だ。

原因は様々だろうが、これでは優勝できるチームにはなれない。

企業も同じで、AWAYで勝ち残れなければ、強い企業にはなれないのである。

果たして、成基コミュニティグループの現状はというと、AWAYでは次世代教育、個別教育とも、健闘しているものの苦戦を強いられている。また、HOMEである京都・滋賀は本拠地であっても死守しなければならないというのが本音だ。

強いチーム(企業)には、強い人財が求められる。

強い人財が集まれば、当然強いチームとなる。

ならば強い人間をヘッド・ハンティングすればよい。それは財力さえあれば、たやすいことだろう。

だが、そのチームの存在意義や理念に同意できない人間は、どんなに強い個であっても、そのチームを勝利に導くことはできない。

だからこそ、人の「育成」にHDSセミナーは徹底的に拘り続けているのだ。

AWAYで勝つチームになるためには、「強い人間を集める」のではなく「強い人間を育成する」ことが最も大切であると、ここで述べておきたい。

そして、強い人間育成の重要なポイントは以下の三つがバランスよく揃っていることが条件となる。

1. 勝つ人間とは、成長意欲を持ち、いつも目標に向かって生きている感性豊かな人間である。
2. 他人に喜んでもらえるよう徹底した仕事をし、人の役に立つ存在になりたいと努めている人間である。
3. 不完全性の自覚からにじみ出る謙虚さを兼ね備えた人間である。

(与えられた現実に甘んじることなく、更に上を見て新しいものを創っていこうとする生き方ができる人間)

よく見てみると、これらのポイントは人間の持って生まれた性質そのものよりも、生きている過程の中で充分創造でき得るものであることに気づく。

つまり、勝つ人間になれない人間はいない、ということになる。

これは塾の子どもたちにも常々言っていることだ。

ダメな子はいない。ただ、目標が見えずにいるだけなのだ、と―。

大切なのは、この三つのバランスを身につけたい、と願う意欲を持つきっかけである。

 

さて、ここまで読んでいただければ、勝つ人間になるために一番必要なのは何なのか、もうお解かりいただいたのではないだろうか。

「目標」「志」「夢」を持つことである。

そうすることで、無意味だと思えたことが、大きな意味を持つように変化してくる。

辛いと思ったことが、苦痛ではなくなってくる。

そして、どんな過去であっても、その過去を肯定的に受け入れ、大きく前進したいと思えるようになる。結果、自己肯定感が高まり、周りのものを幅広く、温かく受け入れられるようになる。

私が、第一話から「夢」「目標」「自己肯定」を何度も繰り返し続けてきた背景には、ただ一言では語れない様々な要因がこれらの言葉に隠されているからだ。

そして、強い人間は、自分の「天命」を探求し続け、お互いの「天命」への志を共有することによって、気脈を通じ合わせ、相乗効果を生み出し、強い組織を創り上げることができるのである。

 

 ※ 次はHDSセミナーから天命についてのお話です。

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