2008.09.09   

第19話 人財キック・オフ

人生の主人公は自分
 
 今回は前回の流れに引き続き、社員と向き合うことの大切さについてお話したい。
 成基コミュニティグループのマニフェストの中にある長期経営方針には、「従業員の夢実現のために(従業員重視)」という項目が掲げられている。
成基コミュニティの最終目的である、子どもたち・保護者の夢実現を支援できる従業員であるために、従業員の夢を大切にすると言った内容だ。
 では従業員の夢実現のためには何が必要か。
 それには前回お話したES(従業員満足度)が大きく関係するが、その満足度の追い風となるのが、「人生の主人公は自分」という社員の意識であり、再認識してもらいたいのが、社員個々のパーソナルミッションである。
 自分は何のために仕事をしているのか、どんな役割を担うべきなのか、そして何のために生きているのかを一人ひとりが深く探求して明確化させた個人のミッション。これこそが、「人生の主人公は自分」という考え方の基本に繋がるからだ。
 ここには会社のために働いているという社員の意識は存在しない。
自分のパーソナルミッションの達成のため働いているに過ぎない。
しかし、このパーソナルミッションへの個々の情熱や想いは、湧き上がるエネルギーの総和によって、個人では成しえない、成基コミュニティの壮大なグランドミッション達成へと繋がっていくのである。
会社のためという意識ではなく、自分のためという個々の意識の集合体が、結果的に組織のミッションに変化していくという仕組みである。
これは無意識のうちに社員の中に会社に対する大きなロイヤリティを産み付けることになる。そして、このロイヤリティこそが、社員参加型のリクルーティングへと発展するのである。

社員参加型リクルーティング

弊社では、以前から、新卒・中途採用に関わらず、社員からの紹介で入社を希望する者が目立っていた。
「私の会社へ来ないか」と誘う場合、誘った社員の会社に対する満足度(ロイヤリティ)は高いはずだ。これこそ真のリクルーティングであると私は感じた。
 自分の会社、そして自分のパーソナルミッションに誇りと自信を持ち、リクルーティングに参加することこそ、いい人財の獲得に繋がると考えたのである。
こうして二〇〇七年十二月から始まった新たな試みが「人財キック・オフ」である。
 社員参加型のリクルーティングを行うに伴い、私は再び社員への意識調査(名称:人財キックオフ意識調査)を行うことにした。
 調査票には質問事項がありそれに答えてもらうというものである。
 その意識調査の質問表をご紹介したい。

質問1:
 あなたは母方の遠縁の二十五才の女性から電話で相談がありました。
 彼女は大学を出て、首都圏の大手学習塾で先生として三年間勤務しているのですが、父親の転勤に伴って来年の四月から京都に家族全員で転居することになりました。
 引き続き、同業の仕事を望んでいるのですが、関西の塾のことを良く知らないというところからの相談です。
 彼女からの質問は「成基コミュニティグループを志望したいのだが、よくわからない。実際に成基コミュニティグループに勤務しているあなたから、事情を聞きたいのだが、自分の会社がいいと自信を持って誇れるところや自慢できるところはどこか」という内容でした。
 具体的に五つ記入してください。(最も自信を持って自慢・誇れるところには「○」を記入のこと)

 この結果、社員全体の回答から、成基コミュニティグループが最も自慢・誇れるところは、「社員重視の会社」と「独自能力を発揮できる」で、各項目とも半数近くに上った。
このふたつは別項目のようであって、一対である。
独自の能力を優先し、個々を認めるということは社員重視に他ならないからである。
よって、これらの項目を合計すると、全体の九割を占める結果となった。
つまり、社員にとって、成基コミュニティグループの代表的な特徴(誇り)は、このふたつということになる。
また、男女で大差はなく、「独自能力を発揮できる」は、勤続年数の少ない社員ほどポイントが高いことがわかった。

 質問2の、あなたが成基コミュニティを自信を持って誇れる度合いを七段階に分けて評価してくださいの項目では、「大変誇れる」「誇れる」は全体で五十五%、「まあまあ誇れる」を入れると八十九%という結果が見えてきた。
最も印象的だったのは「大変誇れる」が勤続年数を増すにつれ増加していることで、これは会社側にとっても安心できる結果であったと思う。

社員たちに人生の主人公は自分だと思ってほしい―。
そんな願いがさらに広がり、社員たちのパーソナルミッションへの情熱が強くなることを私は常に願っている。
そして、私自身この結果に甘んじることなく、社員全員が「大変誇れる」と回答できる組織作りを目指したいと思う。

リクルーティング参加への意義とは

 マニフェスト達成のためには人財が必要。そのためにはリクルーティングに社員が参加することが好ましい―。こうして、人財キックオフ意識調査を行ったわけであるが、
 社員がリクルーティングに積極的に参加することへの意義は、個々の社員自身にも大きな財産となって跳ね返ってくる。
 例えば、昨年は「幸せとは何か」を考える機会が多々あった。
 幸せには方程式があるらしく、計算式は「幸福=現実度 / 理想像」で、幸せであるためには「理想をあまり大きくし過ぎず、直面する目標を実現する努力を行う」か「現状を受け入れ、欲求を抑制する」かのどちらかというわけだ。
 つまり「身の丈を知り、その範囲で満足することが幸せ」ということらしい。
 しかし、それではあまりにも寂しすぎるのではないだろうか。
 できるなら、より高い理想を持ち、それを実現するための努力をしたいものである。
 また、努力というと、いかにも辛いものに聞こえがちだが、パーソナルミッションが明確になり、人生の主人公は自分との思いで、目標に向かえば、仕事は「やらされるもの」ではなく「やるべきもの」へと変わっていくはずだ。
 充実した日々の中で仕事に自信を持ち、自分が身を置いている組織を誇りに思うと心から他人に伝えることができれば、出会った人は、その人が働いている組織をうらやましく思うだろう。
 そして、自分のイキイキと輝いている姿に影響されて、誰かがその組織に仲間入りできたとしたら、これほど自分を誇らしく思えることが他にあるだろうか。
 幸せとはただ遠い理想だけを見るのでもなく、現実はこんなものと割り切ることでもない。日々の積み重ねと個々のチャレンジの中で、見えてくるチャンス(幸せの原石)を見逃さずつかんでいった者だけが、なりたい自分になることができるのだ。
 その過程の中にいるのは決して自分だけではない。
 人生の主人公は自分−。しかし、主人公の周りには大勢の脇役がいることを忘れてはならない。そして、その脇役を心から大切にできる人間だけが、主人公として自分の人生を成功させることができるのだ。
 リクルーティング、そして、個の集団である組織とは、まさに我々にそんなことを教えてくれるのである。
 
☆ 次回はコーチングの視点から本物のコーチ(ネイティブコーチ)に出会うをお話します。

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