2007/03/26
2008.09.09

第11話 「呼吸力」

正しい行動、思考、言葉を学ぶには、それら一切を司る命の緒とも言える「呼吸の力」について学ばねばなりません。実に「生きる」とは「息をする」と言う言葉が転化されたものです。

 

日本武道が「生き死に」について、長い歴史の中で、命懸けで追求し培ってきたノウハウは決して半端なものではありません。

 

この宇宙は、どのようにして生まれ、どういう目的をもって進んでいくのか。私たちの魂はどこから来て、どこへ行くのか・・・などから始まり、星の運行、大自然の摂理、人の心理や行動原理に至るまで、まことに微々細々にわたっての法則性を見出しています。

 

それは、まさに死というものを確かに見つめつつ、生き生きと生き抜くための英知であろうと存じます。

 

私は、なぜ、日本が世界に誇るこのすばらしい文化を、今の日本の人たちが見直し、学ぼうとしないのか不思議でなりません。西洋や中国、インド等、よその国から来たものに飛びつく今の風潮こそ疑問に思えます。

 

霊的世界をスピリチュアルと言ったり、神をサムシンググレートと言ったり、立て文字を横文字に変えて表現することで何か新しいものでも発見したつもりなのでしょうか?私にはわざと「日本」を避けているように思えてなりません。隣の柿が美味しく見えるのでしょうか?

 

さて、愚痴っていても始まらないので話を先に進めます。

 

要は、ものの学びの基本は「呼吸の力を知る」ことであり、言い換えれば「生きる」ということについて真剣に学ぶと言うことです。

 

古来、この呼吸の力を「水火(いき)」と呼んできました。では、なぜ「息」と書かずに「水火」と書くのでしょう?

 

言霊の世界では、水は物質を表す総称で、火は精神を表す総称です。つまり水火とは、物と心が融合した状態を言い、そして、生きるとは、肉体と霊魂が一致して活動することを言うのです。

 

水は陰でマイナスの力、火は陽でプラスの力です。この二つが組まれて電気が発生いたします。水火は、この陰陽一致によるエネルギーの発生を表すものです。

 

この水火が組まれて電気エネルギーが発生し、次いで旋回が起こります。それは螺旋状になって、外に向けては無限大に伸び広がり、内に向けては無限小に凝縮されていきます。

 

大きくは、この宇宙の星と星とが螺旋運動によってつながっており、そして、小さくは、この宇宙の運行と同様に、人と人とが螺旋運動によってつながっています。

 

ご承知のように、台風や竜巻など、見えない大気の力は螺旋を描いています。しかし、ただ風だけを見ても、どのような形状で吹いているのか確認できません。風に雲や水などの眼に見える物質などがともなってこそ、初めて大気が螺旋をしているのだと言うことが確認できます。空気に色はありませんが、そこに煙を流せば空気の流れも見えるようになるようなものです。

 

私たちは霊魂そのものですが、ここに肉体という色がついているからこそ確認できるのです。色即是空、空即是色・・・と言う経文がありますが、まさにそのとおりなのです。

 

何でも物質がともなわないと、その力の存在というもの確認が出来ません。電気があっても、蛍光灯と言う機械がなくては灯りがつきません。

 

このように、マクロの世界にしろ、ミクロの世界にしろ、螺旋と言う見えない力が存在して、その影響のもとで、陰と陽、プラスとマイナスなど、対照する存在二つのものが絡み合わさり、また同時に存在し、初めて万物があると言うことです。

 

 人の体も、水と言う肉体に、火と言う霊が絡まっています。実際、私たちの体について言いましても、DNAをはじめ、筋肉、神経などあらゆる肉体の組織が螺旋状にからまって出来ています。

 

絡(から)まると言うことは、結び合わせると言うことであり、結びは蒸す、産すということです。結びの力は、螺旋運動により成る結合の力を言います。いにしえでは、ものを産み出す力のことを「結びのわざ」と言いました。

 

この事実を知るとき、生きるということは、水と火が螺旋運動を起こすこと、と言っても良いと思います。

 

これを思いますと、死ということは、呼吸が停止することですが、同時に、呼吸の停止により、この物質的な螺旋の絡みも解けることを言うのではないかと思います。

 

先ほどの説明でお分かりのとおり、大気は螺旋しており、よって気と言う存在は螺旋の形であると言えます。(大気は、天の気であり、小気は人の気です。天の気も人の気も同じエネルギーであると古来の人は考えてきました)

 

呼吸が螺旋していることを知れば、その螺旋に沿って物質が絡まっていくことも理解していただけるでしょう。

 

一般に言う「気の力」とは、実は「火(心、魂、霊)」のことであり、単に心や気持ちを表すもので、実のともなわない片手落ちのエネルギーです。しかし、水火といいますのは、気の力よりさらに具体的で大きな力を指すのです。

 

ですから、いままで気と言ってきたのは、実は水火のことであると言うことが出来ます。

 

水火の規則正しい運用法により、正しい言葉使いが生まれ、正しい行動原則が生まれ、正しい思いが生まれます。

 

この水火の運用法は、言霊という日本独特の法則から学ぶことが出来ます。日本は言霊の幸はう国と言われていますので、その悠久の歴史の中で培ったノウハウは驚くほど緻密に組み立てられています。

 

例えば、音声の「ア」を例にご説明させていただきます。

 

「ア」は、喉を開く音です。この音声は、胸式呼吸により発声します。胸式呼吸は、左右の広がりを見せる音声で、柔らかい動きをする時に使われます。また、この音声は、幸魂(さちみたま)と言われる「愛」の心を養う音声となります。

 

もっと、細かに説明しますと、この「ア」の音声により、骨盤は右回りに旋回します。

そうなりますと、腰の動きに乗じて右の手のひらが上に向き、左の手のひらが下に向きます。そして、自然に体は右半身となり、右手、右足が前に出ることになります。

 

このように、言霊は、決してオカルトの世界の産物ではなく、ざっと説明するだけでもこのように音声には緻密な法則性があり、私たちの生活に直結していることが分かります。

 

もう少し、言霊について説明をさせていただきます。

 

私たちには音声による基本的な要素が五つ与えられています。その五つの基本法則と言うのが、五大父音と言われる「アオウエイ」の言霊です。母音と言わず父音(ふおん)と言うのは、それが神の音声と言われるからです。「天にましますわれらが父よ・・・」と唱えるように、神の音声は父とされています。

 

ちなみに、母は大地を表します。これは万物を生み育てる大いなる土の力の偉大さを、母として表現しているのです。「天の一滴、地に滴り落ち、恵みをもたらす」といにしえから表現されているとおりです。

 

そして、この五つの音声を基本として「75声」もの法則を有しているのが私たち日本民族なのです。言い伝えによれば、この五つの音声を柱に、75声の活用を行って世界を平和におさめてきたと言われています。

 

「たった75しかないのか」と思われるでしょうが、75の水火の組み合わせは無限に広がり、数で表せば天文学的数字となります。それほど言霊の力と言うものは強力なものだと言うことが言えます。

 

「あなたが、それを信じ、あの山に向かって動けと命ずるなら山は動くであろう」と聖書にも記されています。固く信じて言葉にすると、思ったことは実現する・・・これは、まったく奇跡とも言える法則と言えます。

 

この法則は、決して人為的に出来たものではありません。人の行動を見て統計をとって研究して調べた揚句に創ったものなどではなく、この法則が、まず最初にあってこの世を創造したのです。

 

「はじめに言葉があった・・・すべてのものはこれによって出来た・・・できたもののうち、一つとしてこれによらないものはなかった」このヨハネ伝のとおりです。

 

神が「光」と言って光が発し、「人」と言って人が生まれたのです。

この法則を学ぶことにより、言葉の大切さを認識し、行いを改め、心を正し、もって人はより人らしく、お互い仲良く、豊かに楽しく生きていくことが出来るのだと思います。

 

「気」については中国が専売特許かもしれませんが「水火」つまり言霊については日本でしか学べません。

 

気は「火」ひとつですが、水火は「水」と「火」の両方を含んだエネルギーです。つまり、水火は、火と言う霊的エネルギーに、水と言う体的エネルギーが加わり、実のともなった驚くべき力となります。

 

日本は「気を練る」のではなく「水火を結ぶ」国と言えます。

 

ついでに言えば、国旗である日の丸は、日は火で「・」を表し、丸は水で「○」を表しています。この「・」「○」を統合して「ス」と言う言霊を意味します。

 

 スは、統べる、主となる、素にもどる、澄み切ると言う意味で、言霊75声の中心になる重要な音声です。

 

このス声は、宇宙の創造神である天之御中主大神(アメノミナカヌシノオオカミ)を表し「一人はみんなのために、みんなは一人のために生きる」と言う全人類が和合一致する和の法則を教えてくださっています。

 

以上のように、水火は、人と社会の秩序とバランスを取り戻し、二つのものを一つに結ぶ力をもっています。

 

現代、これほどに秩序を失い、人心荒廃も甚だしい時代は、かってなかったほどに極まっているのではないでしょうか。

 

さすれば、まもなく言霊の法則がはたらき、この世界はもう一度再生することになるでしょう。

 

続く・・・

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