2008.12.29   

第20話  より人に役立つ仕事をするには  その1

多くの方は20歳前後から働き始め、およそ40年から50年にわたり何かしらの仕事に携わります。もちろん生涯現役の方もいらっしゃるでしょうが、仕事を通して、自分の天命を実現していくことが大半だと思います。それほど仕事は、人の生涯にとって重要なものです。

私は、現在は開業をして、うつ病や動脈硬化症・癌といった様々な疾患の患者さんたちを診させて頂く中で、「愛となり癒しとなる医師」という自分の天命を果たしていこうとしています。これまでの20数年間は、内科医そして放射線科専門医として癌を始めたくさんの患者さんたちの診断と治療に従事してきました。またもうひとつの専門資格として、ファイナンシャル・プランナー(CFP_)という、税金や保険・相続といった人の一生の中でお金に関わることにアドバイスできる資格(国際認定されたライセンス)を持っています。今回は天命としての仕事について、特に志ある若きリーダーの方たちに、少しでも参考になればという思いでお話します。

初めに、仕事とは、「人に役立つこと」だと思います。

皆がそれぞれの個性を活かして「助けること」、「伝えること」、「創ること」などといった個々の天命を、自分の仕事を通して発揮していきますが、こうした様々な天命の根底を流れている願いは、「人に役立つこと」だと思います。医師としての仕事も、鉄道技師としての仕事も、どの仕事もすべて人に役立つことです。そして各人が自分の仕事を天命として全うできたら、どんなにか素晴らしいことでしょう。

職種は違っても、仕事を覚え、実践していく姿勢は同じだと思います。より人に役立てる仕事をするために、より天命を発揮して輝ける人生とするために、私が医師として学んできた経験から、仕事への取り組み方として、


1. 自分の専門をまずはひとつ身に付けること。
2. 誠実であること。そして正確迅速であること。
3. 将来の具体的なイメージをもつこと。
4. 時間を作ること。

以上の4つをあげたいと思います。

 初めに、
1. 自分の専門をまずはひとつ身に付けること。

「仕事をする」ということは、「人に何かを提供する」ということだと思います。あなたは「何を」人に提供できるのか?それがまさにあなたの専門となります。

内科研修医のとき、1枚の胸部X線やCT(コンピューター断層撮影)のフィルムを見ても、そこにある病気やその進展具合などの診断は、自信がなくあやふやなものでした。しっかりと診断が出来、自信をもって患者さんを治療したいと思い、その後内科から放射線科に移り本格的に診断を学び始めました。そして10年後には多くの様々な専門科の医師たちの前で、胸部X線やCT画像の診断ポイントについて講演をしている立場になっていました。つまり他の医師たちに、患者さんが撮った画像からその患者さんの病状についての診断を提供できる立場になった、ということです。

私が具体的に画像診断という専門を身につけるためにしたことは、3つあります。

@ 集中継続して専門分野の本を読み、まずは知識を獲得する。
私の生活リズムは朝型で、朝7時には医局や病院の研究室に行き、仕事開始前の1時間を利用して診断に関する医学書や論文を読み、専門知識を獲得しました。何事も1,000時間くらい勉強すれば、それなりの専門知識を身につけられると言います。1日1時間でも3年あれば1,000時間以上になります。もちろん経験も大事なことですが、今どんな職業をしていても、必ずその分野の専門知識が必要不可欠なはずです。自分が目指す専門に関して、まずは本を開きましょう!

A 優れている人がいたら、年齢に関係なく、どのようにしてその人が学び体得しているかの教えを請う。
医局に3年後輩の大変優秀な先生がいたので、私は彼にその勉強方法を聞きだしました。彼の記憶力は大変素晴らしいものがありましたが、それ以上に、彼は毎日出会った症例や疑問点について調べ、それをノートにまとめ上げていました。早速私も彼の真似をして、これに自分の経験を加えて自分なりの「診断重要ポイント」といったノート作りをしていきました。自分の仕事を本物にするために、小さなプライドはとっとと捨てましょう!

B ポイントは何かを考える。 
内科医時代、医局での症例検討のときに、担当の患者さんの病気の経過を知る上でキーポイントとなる大事なデータを教授に聞かれ、即答できずにカルテを調べている主治医がいました。どの仕事にもポイントがあります。肺炎なら血液ガスの酸素や二酸化炭素の濃度それに炎症データなど、腫瘍ならその画像所見や腫瘍マーカーのデータなどなど。自分の今の仕事において、「何がポイントになるか?」これをいつも考え、押さえておきましょう!

 以上が自分の専門を身につけるためにした3つのポイントでした。

 次に、「より人に役立つ仕事をするには」の2つ目は、

2. 誠実であること。そして正確迅速であること。

医師だけでなく、どの仕事においても誠実であることは不可欠なことだと思います。提供できる専門知識や経験はとても大事なことですが、結局は、仕事は「人」がしているのです。そこに人としての誠実な姿勢があるかどうかが、仕事の質を換えます。そこに信頼が生まれます。信頼は何よりの財産です。

スローライフが望まれる現代かもしれませんが、仕事の多くは、やはり正確かつ迅速であることが求められます。専門を磨き、ポイントを押さえていくことで、仕事はより正確に速くなっていきます。胸部X線やCTの診断を、病院や健診などを行っている医療機関から依頼されますが、できるだけ即日に診断をして対応することで、相手に喜ばれ、その評判が次々とさらなる仕事を運んでくれるようになりました。

また、新しい医療を学ぶために、新潟から毎週のように東京での研究会に出席したり、研修を積み重ねたりしていましたが、初めは新しい分野で、どの先生も誰も知らないゼロからのスタートでした。しかし、回を重ねるごとに次第にその分野のトップの先生たちに信頼され、3年経った今では気軽に意見を交換できるようになっています。

人は必ず自分の人となりや仕事を見ています。そして厳しいですが、評価しています。どんなときでも、仕事に対して誠実な姿勢を貫き、正確迅速を心がけることで、次のステップとなる道が開け、何よりも大事な信頼を築くことができると信じます。

 さて、次回は、「より人に役立つ仕事をするには」の後半の話をしたいと思います。志あるリーダーとなる若き方たちに、少しでも役立つことを祈って。

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