2009.01.26   

第22話  より人に役立つ仕事をするには  その3

− 放射線科専門医とファイナンシャルプランナー(CFP)−

前話では、より人に役立つ仕事をするための4つのポイントを話しました。今回は、私の専門である、放射線科専門医としての仕事と、もうひとつの専門資格であるファイナンシャルプランナー(CFP)についてのお話をします。

自分の仕事において専門を持つということを話してきましたが、とりわけ医師の世界においては専門化が進み、各科ごとに専門医制度を導入して、臓器単位の専門医まで誕生しています。専門化することで、より疾病に精通することは確かに大切なことです。しかし、患者さんの肝臓は診られるが、同じ患者さんの肺は診られない、というようなひとりの患者さんを総合的に診られないという専門化の弊害が生じています。何事もバランスが大事だと考えます。

さて放射線科専門医と言われても、「いったいどんな仕事をしているの?」と多くの方は思われるのではないでしょうか。この仕事は大きく「診断」と「治療」の2つに分けることができます。「診断」とは、低エネルギーのX線を使った単純写真やCT、それにMRI(磁気共鳴画像)やシンチといった核物質を使った検査で得られた画像から、病気の有無や進展状況を読み取るものです。これをレポートにして依頼した各科の主治医に報告する仕事です。アメリカでは、「Doctor's Doctor=医師の医師」とも言われており、その仕事は高く評価されています。

また、「治療」とは、その対象のほとんどが癌患者さんで、原発巣や転移部位へ高エネルギーのX線を照射することで、癌の縮小や痛みの軽減を図る仕事になります。この2つの「診断」と「治療」に関する専門医試験に合格し、ある程度の経験を積んだ医師が、放射線科専門医となります。

放射線科医は診断や治療を通して、まさに頭の先からつま先までの病気に関わるわけで、医師の中でも一番病気についての幅広い知識があると思います。私が内科医時代、各科の医師が集まった症例検討の場で、放射線科医の疾患に関する幅広い知識に驚かされました。已むを得ないことですが、どうしても自分の専門の科の病気についての知識に偏るからです。

そんな診断と治療の仕事において、私は呼吸器内科に在籍していた経験もあり、特に呼吸器疾患の診断を専門としていました。とりわけ専門とした診断の仕事のひとつに「透視下CT肺生検」という肺癌確定診断のための検査があります。これは、胸部CTで肺に「影」が見つかったときに、その「影」が癌であるかどうかの確定診断をする仕事です。確定診断をつけることで、外科手術の必要性や化学療法の内容をどうするかといった治療方針を決めることが出来ます。その方法は、「透視化CT」といって、ほぼリアルタイムに患者さんの肺の中の「影」をテレビモニターで見ることができるCTを使い、患者さんの皮膚から細い針を刺して、「影」の一部を採取してくる、つまり「生検」してくる検査です。

肺癌であることを確定できる正診率は90%を超えています。すでに私は1,000例以上この検査を施行しており、経験数ではおそらく日本でも数えるほどだと思います。また、今までに肺癌と診断できた症例の中で最小の症例は、直径5mmの肺癌でした。それ程の精度をもった技術であり、幾人かの後輩の医師にこの検査を指導しましたが、残念ながら私が勤務していた新潟県でこの検査をできる医師は、現在私ひとりです。そんな訳で、東京で開業した今も定期的に新潟に通って、この検査を施行しています。

さて、もうひとつの専門資格としてファイナンシャルプランナー(CFP:Certified Financial Planner)があります。これは、人生におけるお金の問題、例えば税金や保険・不動産・相続・金融資産といった問題に際して、その人(顧客)にとってよりよい財政設計を提案することのできる資格になります(現在私は実際にこの資格で収入を得る活動はしておりません)。日本人はこういったお金の問題を個人的に専門家に相談することはあまりありませんが、アメリカでは弁護士や会計士と並んで、非常に信頼されている仕事です。

ファイナンシャルプランナー(FP)の資格にはふたつの段階があり、顧客に対して基本的な財政設計の対応ができるAFP(Affiliated Financial Planner)と、さらに専門的に対応できるCFPがあります。合格率はAFPで40%台。そのAFPの合格者がCFPを受ける受験資格があり、CFP合格率は10%未満と、かなり難しい資格試験になると思います。特にCFPでは「金融資産運用設計」、「不動産運用設計」、「ライフプランニング・リタイアメントプランニング」、「リスクと保険」、「タックスプランニング」、「相続・事業承継設計」の6課目すべてに合格しなければなりません。

現在、国際組織FPSB(Financial Planning Standards Board Ltd.)が設立され、世界の20カ国・地域のFPSBメンバー組織によってCFP資格が認定されています。それだけにこのCFPは、世界で認められた共通水準のファイナンシャル・プランニング・サービスが提供できるプロフェッショナルであることの証明となります。2007年現在、世界でおよそ11万人、日本ではおよそ15,000人のCFP認定者がいます。(日本ファイナンシャルプランナーズ協会http://www.jafp.or.jp/)

この資格を取るきっかけは、家を建てたときに、住宅取得税などの様々な税金のことを必要に迫られて調べなければならなかったことによります。調べるうちに知的好奇心にかられ、FPに関することに興味が沸き、まずはAFPを取得。その後さらに知的探究心が高まり勉強を続け、このCFPを取得したというわけです。ちなみに新潟大学医学部の大学院に進学したのも、放射線医学を臨床の場で学ぶだけでなくさらに学問的により専門に学びたいという知的探究心にかられての進学でした。

CFP認定者となって、私は大きく2つのことを得ました。ひとつは当然ですが、お金に関する幅広い知識を得ました。もうひとつは、毎月地元のFP勉強会に参加して、そこに集まる税理士や弁護士、銀行員や不動産会社やリース会社を経営されている方たちとの交流により、社会人としての常識的なバランス感覚が養われたということです。医師はものすごく狭い世界で生きています。卒業後すぐに「先生」と言われ、一般の方との付き合いは「患者さんと医師」という関係です。かなり常識やバランスを欠いたところがあると思います。まったく自分と違う専門で働く方たちと付き合うことで、自分の社会人としての視野が広がりました。

より人に役立つために、まずは専門をひとつ身に付ける必要性をお話しましたが、ひとつの専門で生計が立てられるようになったら、できれば今の専門と違った専門をもうひとつ学ぶことをお勧めします。自分の世界が広がり、新しい尺度が持て、それぞれの専門がより深く、奥行きあるものとなります。

以上が私の放射線科専門医とファイナンシャルプランナーCFP2つの専門についてのお話でした。

「より人に役立つ仕事をするには」ということで、前話において4つのポイントを挙げましたが、最後に言っておきたいことは、やはり、

「愛をもって仕事をする」

ということです。前話でも述べましたが、仕事は人がするものです。人がする以上は、「自分の仕事が人により役立つように」という「愛のこころ」をもって仕事をすることです。「人に役立つこと」これは何よりも愛の行為です。愛を込めた仕事をしてもらった人、またそのうわさを聞きつけた人も、「あなた」にこの仕事をして欲しい、と求めてくるでしょう。

さて次回からは、開業した私の塚田クリニックにおいて、現在どんな診療を行っているのか?どんな症状や疾患に効果があるのか?超高濃度ビタミンC点滴、キレーション点滴といった点滴療法。そして音響療法や栄養療法といった最新の医療を、順次紹介させていただきます。これを縁にひとりでも多くの方が癒され、元気になることを願っています。

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