2009.03.10   

第25話 理想的なガン治療「高濃度ビタミンC点滴」その3

前話までは、理想的なガン治療である「高濃度ビタミンC点滴」の実例や効果とその薬理学における作用機序、さらに実際の点滴方法などを話してきました。ここで、ガン治療においてもうひとつ、どうしても欠かせない治療である「栄養療法」について少しだけ触れておきます。この治療の詳細は次回にお話します。

ガン治療における「高濃度ビタミンC点滴」と
 「栄養療法」との併用による相乗効果
 

「栄養療法」とは、「不足する栄養素を十分に補うことによって自然治癒力を活かし、より健康な状態に導くアプローチ」のことです。現代医療において、ガンに対する3大療法は「手術」、「化学療法」、「放射線治療」と言われています。私はこの「栄養療法」は、これら3大療法そして「高濃度ビタミンC点滴」なども含めたすべての治療の根底にあるべき治療と考えています。何故ならば、どの治療をするにあたっても、患者さんの栄養状態を改善させることは、各治療との相乗効果をもたらすことができるからです。

また、患者さんの予後を左右する因子には、各治療方法の他に、性別や発症年齢そしてガンの種類や進行度など様々な因子が関与します。私は自分の経験から、こういった因子の中でも特に患者さんの予後やQOL(生活の質)を決める重要な因子は、「栄養状態」であると考えるからです。  

そこで、患者さんの栄養状態を知る上で大事な指標が2つあります。ひとつは、血清のタンパク質特にアルブミンの値。もうひとつは、ヘモグロビン値に代表される貧血の程度が何より重要です。「アルブミン値」と「ヘモグロビン値」、この2つの値が、患者さんの栄養状態を表す代表的な指標となります。栄養素を使ってこれらの値を改善させる「栄養療法」を併用することで、ガンの3大治療や「高濃度ビタミンC点滴」は、より相乗効果を発揮することができるのです。

「高濃度ビタミンC点滴」が適応とならない症例

「高濃度ビタミンC点滴」のプラス面のみを語ってきましたが、大変残念なことにこの点滴を使うことのできない場合があります。次の3つ、特に初めの2つは「高濃度ビタミンC点滴」の治療にとって禁忌となり、残念ながらできません。

1.腎不全
透析をしているような腎機能が低下している症例には禁忌となります。これはビタミンC点滴によって腎臓に急速にシュウ酸が溜まり、さらに腎機能を低下させることがあるからです。

2.G6PD欠損症
G6PDとはグルコース6リン酸脱水素酵素のことで、赤血球の膜にあって活性酸素の攻撃から守ってくれます。しかしこの酵素が欠損していると、ビタミンCが作る過酸化水素により赤血球の膜が壊れてしまう「溶血」という現象が起こり、貧血となります。日本人では0.1〜0.5%の頻度と言われています。特にビタミンC50g以上の点滴において出現しやすくなります。

3.胸水および腹水が大量にある症例
高濃度ビタミンC点滴では、投与するビタミンCの量に比例してこれを溶解する蒸留水の量も増えます。点滴による水分量の負荷により、体内の胸水や腹水がより悪化する可能性があります。このため、胸水や腹水がある場合は、その程度により高濃度ビタミンC点滴の効果を考慮して、点滴の是非を判断します。

高濃度ビタミン点滴の副作用

前述してきたように、「高濃度ビタミンC点滴」では、化学療法のような嘔気や嘔吐、脱毛、骨髄抑制による白血球の減少といった副作用はみられません。しかし、大量のビタミンCを用いることで、通常の点滴よりも浸透圧が高くなります。このために以下の様々な症状、いわゆる副作用が出ることがあります。

点滴刺入部の痛み

 点滴療法全般に言えることですが、点滴刺入部に局所的な痛みを感じることがあります。この痛みに対して温湿布をあてることやマグネシウムを点滴に入れることで軽減できます。

 眠気やだるさ

 花粉症などのアレルギーの薬を飲んだ時に眠気を感じるのは抗ヒスタミン作用によるものです。ビタミンCにもこの作用があるために、同様の症状がでることがあります。一時的な症状ですので心配いりません。

 吐気や頭痛

 「高濃度ビタミンC点滴」の浸透圧の高さや点滴速度などが原因と思われます。十分な水分の補給や点滴速度の調節で対応します。

 低血糖症状(冷汗、疲労感、めまいなど)

 ビタミンCはブドウ糖と化学構造が極めてよく似ています。この点滴によりビタミンCが体に入ると、体内ではブドウ糖が入ったと勘違いをして血糖を下げるインスリンを分泌します。このため低血糖の状態となると言われています。点滴前は空腹時でないようにしていただき、低血糖症状が出たときは、ジュースを飲むなどして対応しています。

 また、糖尿病の方は、簡易血糖測定器を使ってご自分の血糖値を測定することがありますが、「高濃度ビタミンC点滴」直後にこの測定をすると、大変高い血糖値となります。これも、ビタミンCとブドウ糖の化学構造が似ているために起こる「みせかけの高血糖」といった現象です。万が一点滴後簡易測定器で高血糖であったからといって、インスリンの追加注射をするようなことはなさらないで下さい。


 溶血(赤い尿や貧血)


 G6PD欠損症がある方で、特にビタミンC50gといった大量の点滴をした場合に、赤血球が壊れてしまう「溶血」といった現象が起こります。点滴治療開始前の血液検査により事前にG6PDという酵素をチェックします。

以上のようないわゆる副作用が、「高濃度ビタミンC点滴」ではみられることがありますが、点滴前の検査や適切な処置で充分に対応できますので、心配なさらないで下さい。

何故今ビタミンC点滴か?その歴史と経緯

初めてビタミンCとガンとの関係を報告したのは、1937年ドイツのアッペルバウム博士で、「ガン患者では血清ビタミンC濃度が極端に低く、ゼロに近い」ことを報告しました。そして実際にガン治療としてビタミンCが使用されたのは、1940年ドイツのドイチェルが進行ガン患者にビタミンCを1〜4g服用させたことに始まります。

なんと言ってもビタミンCの効能が世の中に広く知れ渡ったのは、ノーベル化学賞と平和賞の2つを受賞した天才ライナス・ポーリング博士の功績によります。博士は、1970年に「かぜとビタミンC」を出版、さらに「ガンとビタミンC」を出版し、これが世界的なベストセラーとなり、ビタミンCは風邪やガンに有効であることが世に知れわたりました。しかし大変残念なことに、博士のこの業績は、権威ある世界的な大病院の医師らによる不適切な追試験による報告で否定され、それ以来まったく陽の目を見なくなりました。

その後、博士の弟子たちにより脈々とビタミンCの研究や治療が続けられ、ついに2005年アメリカ科学アカデミーの権威ある機関誌「アメリカアカデミー紀要」に、ある論文が発表されました。その論文の主旨は、「高濃度のビタミンCがガン細胞を選択的に殺し、正常細胞には害はない」というものでした。これを発表した研究者たちは、アメリカ国立衛生研究所(NIH)、国立ガン研究所(NCI)、アイオワ大学医学部、食品医薬品局(FDA)に所属しており、多数の実験結果から、点滴で達成できる濃度のビタミンCが多くのガン細胞を殺していることを確認しました。これを機に、アメリカ本国はもとより日本においても「高濃度ビタミンC点滴」が広まり始めました。こうしてポーリング博士の功績が再認識されたのです。

目をみはるような治療効果を発揮し、理想のガン治療を期待される「高濃度ビタミンC点滴」ですが、確かに、余命を宣告されたすべてのガン患者さんを元気にすることができるわけではありません。また、今後症例を重ねる中で、「高濃度ビタミンC点滴」をもってしても治療困難な難治性の症例も出てくるものと思われます。今、医療の世界では、治療を行う上でそれが科学的根拠に基づいた治療であること、すなわちEVM(Evidence-based medicine)であることが叫ばれています。現在様々な癌に対する「高濃度ビタミンC点滴」の有効性についての大規模な治験が、アメリカやカナダの大学において行われている最中です。一日も早く、この「高濃度ビタミンC点滴」という治療が、EBMとして広く世に認められ、他の様々の治療との併用も考慮しながら、多くのガン患者たちの希望の光となることを願って止みません。

「高濃度ビタミンC点滴」についての話は、まだまだたくさんしたいところですが、今回にて終了とさせていただきます。身近な方でガンに苦しまれている方がいらっしゃいましたら、ぜひともこの「高濃度ビタミンC点滴」を受けられることをお勧めします。まさに「高濃度ビタミンC点滴」は、ガン治療の希望の光であると確信します。

次回は、すべての治療の根底となるべきと考える治療、「栄養療法」についてのお話をします。

 

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